大変、「おっぱい」をやめなければ――
大変、「おっぱい」をやめなければ――
1歳9か月の頃のことです。私は「子育てと職場」の両立を楽しんでいたものの、時折、頭痛や疲労に悩まされるようになりました。病院で診てもらったところ、「甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)」と診断されました。
「投薬治療が必要なので、母乳はやめてください。えっ、こんなに長く飲ませていたんですか?」と、医師に驚かれました。
さて、どうしたものか……。その頃の加奈子は、日中は祖母の家に預けていたのですが、離れていた時間を埋め合わせるかのように、帰宅するなり「おっぱい」を求めてきました。
帰宅時間になると、近所に住む塩川のおばちゃんがよく顔を出してくれたのですが、少し話を交わすだけで、「おばちゃん、もう帰って!」と、授乳時間を邪魔されるのを嫌がるほど、「おっぱい」が大好きだったのです。
そんな加奈子から「おっぱい」をやめさせることは、母親としてまさに至難の業だと思いました。
しかし、私は加奈子にこう語りかけました。
「加奈ちゃん、お母ちゃんね、お医者さんに行ったら、病気があるって言われたの。それでね、お薬を飲まないといけないから、おっぱい、やめなさいって言われたんだよ。」
加奈子は「ふーん」と聞いていましたが、その日を境に、一度も母乳をねだることはありませんでした。
幼い子でも、きちんと話せば理解できるのですね。その物分かりのよさに、私は思わず涙しました。
それから毎日、私は帰宅後に夕食を作る前、加奈子と絵本の時間をもち、スキンシップを楽しむようにしました。
ここまで10/179ページ中
関連記事