Dear お母さん
母の日の手紙をなくしてしまったようなので、改めて書いてみたいと思います。
いつも仕事が大変なようですね。私は働いているお母さんが大好きです。
私も将来、お母さんのようにバリバリと仕事をこなす人になりたいです。
でも、体にはくれぐれも気をつけてください。とても心配です。
肉体は魂のただの器かもしれないけど、この世に私たちが存在している限り、とても大切なものだし、無理はダメです。
疲れたら休みましよう。
時間がないといってたら、神様が強制的に休みをつくってしまうかもしれないよ。
私はこの頃、こう考えるようになりました。
先の心配をするよりも、今の一瞬、一瞬を楽しもうって。
楽しむといってもそれは、充実させるっていうことです。
沖国(沖縄国際大学)という目標は定まったんだから、それに向かい今日を楽しむ。
目のことを誰がなんと言おうとかまわない。
私には私の大切な人たちの愛が左目には見える。
時には冗談やいらだちでお母さんを責め立てたことを許してくださいね。
私の悪い所は考え過ぎる事です。
今からはいい意味でゆとりを心に持って頑張りたいです。
だから、気持ち的にも仕事的にもゆとりをもっていきましよう。
一度にたくさん、消化しようとするなんて大変だから、
今日は今日の分の消化を目的として頑張りましよう。
でも、それは決して妥協ではなく、ベストを尽くすという事。
これからも応援よろしくです。
お父さんと加奈子にとってお母さんはとても大切。
大切すぎてそれは、たまに見えなくなってしまうけれど、これだけは忘れないで下さいね。
今日、久しぶりに家を掃除しながら、この家を見ていると、とてもステキな家だなと、思いました。
私は今、とても幸せです。
お母さんも幸せだといいな。もちろん、お父さんもね。
それでは、明るい未来へ向かい、
感謝と二〇〇〇年の愛情を込めて。
You are the sun in family.
Thank you from Kanako.
お互い自分の心を言葉で、言い表せない時、このように手紙をやりとりするのが常の親子でした。
今、本当によかったと思います。
その時々、互いに何を考えているか文章化することで、より分かり合える事ができたし、又、年月が経つと、口頭で話し合っていた事は忘れてしまうこともあります。
こうして加奈子が残してくれた言葉の数々は、これから先、私の道標となってくれます。
時には悲しくて行き詰まり、崩れそうになっても。
現実として、僅か二〇年しか一緒に暮らさなかったけど、
これから先、夫や私を励ましてくれる大切な宝物になってくれます。
家族の絆を改めて噛みしめています。ありがとう加奈ちゃん……と。
前述しました様に、自分と向き合い成長していく加奈子の変容は、文章の中で伺い知る事ができます。
病気との闘いの間も最初の頃こそ、痛みに耐えかねて、周りの者にぶつけるような事もありましたが、高校を卒業し、塾に通うようになった頃から急速に成熟し、人の心を読みとるようになりました。
弱音を吐くと身内のものが悲しむ事を気にして、文章に表現する事で自分と向き合っていたようです。
113/155