一冊の黒表紙のノート
一冊の黒表紙のノートがあります。
最後まで心模様を織り込んだノートです。
いとこのあ―ちゃん(睦子さん)が、お見舞いにくれたノートで、冒頭には病気と闘って欲しい、との願いを込めたイラスト入りの文章が書かれ、加奈子を楽しませ、励ましてくれました。
そのノートに加奈子は自分の思いを書き綴っていきました。
加奈子につきそい、 一緒に病気と闘っているつもりの私がともすれば弱気になりそうな時、逆に励ましてくれた加奈子の心内はこのノートに
詰まっているようです。
七 病魔との闘いの中でも文章を綴って
(加奈子のノートより)
彼女は私に言いました。
「どんなに探しても、神様がみつからない。」
夏の昼下がり、ふと空を見上げると雲の陰に天使が笑った様な気がしました。
「神様っているのかしら。」病院という閉ざされた生活を余儀なくされている娘を不憫に思い、私が不覚にも漏らしてしまった時、加奈子はこのような回答をしていたのでしょう。自分を励ましつつ。
本当に「一番悔しくて納得がいかないのは加奈子自身。」(加奈子のいとこの紀一郎さんの弁)なのに一番分かっている筈の私が愚痴を言うのです。
114/155
関連記事