加奈子メモリアル手記 愛の一雫

大湾由美子/加奈子 著

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第一章

初めてのステーキ

初めてのステーキ……味より音が楽しくて

とかく「初めてのこと」は、親の思いと子どもの思いが大きく食い違うものです。
固いものも平気で食べられるようになったので、「今夜はステーキにしようね」と、家族で夕食を囲みました。
「ステーキ、ステーキ!」とはしゃいでいたのに、フォークとナイフを見つけた途端、もう大変。カチャカチャと鳴る音が楽しいらしく、遊び始めてしまいました。

危ないからとナイフを「ちょうだい」と言っても放しません。とうとう私が取り上げてしまいました。
その瞬間、小さな手からフォークが飛び、お茶碗やお皿がひっくり返されてしまいました。
そして本人は、いつもの癖で母さんの背中に回り、「おんぶ、おんぶ」と泣きながら連呼します。

「ごめんなさいって言って」と、私たち両親は“しつけ”と称して謝罪を促しますが、本人は言いません。
そこで私は、「キティちゃんごめんなさい。あられちゃんごめんね。痛かったでしょう?」と、お椀やお皿の模様のキャラクターたちに一生懸命謝りました。

その様子を見ていた加奈子は、泣くのをやめ、私の前に来て「オメンネ、オメンネピ(=ごめんね)」と、小さな手を額にあてて敬礼しながら、お皿たちに謝りはじめました。

その姿に思わず涙がこみ上げてきました。
「優しい子になってほしい」――そんな願いを込めて、加奈子を抱きしめると、彼女は無心におっぱいを飲み始めました。

子どもの思いをくみ取らず、「ステーキ」などというメニューを考えてしまった母が悪かったのですが……それにしても、意に添わない時の反発や、謝らない強情さに、幼いながらも怖さと驚きを覚えました。

「子育ては乳幼児の発達に沿って」と、職場ではモットーにしているはずの私が、自分の子育てにおいては活かせていなかったことを反省した出来事でした。

初めてのステーキ


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プロフィール
まさや
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2022年に出版された「加奈子メモリアル~愛の一雫~」(大湾加奈子・大湾由美子 著)を連載、紹介しています。
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