第一章
初めて、母親が家を空けて研修に
初めて、母親が家を空けて研修に行きました。二泊三日の旅でした。
加奈子が三歳になるまでは、職業を持ちながらも、職場にわがままを言って、できる限り母親としての時間を優先しようと考えていました。もちろん、勤務時間中はそうはいきませんが、勤務終了後の夜の集まりなどは控えていました。そのような私の気持ちをくみ取ってくださる先輩が、「母親の代わりは誰にもできないから、大事にしてあげなさい。やるべき時が来たらやればいいのよ」とアドバイスしてくださいました。
女性が良き職場人と良き母親として両立していくためには、そのような温かい雰囲気がありがたいものだと、つくづく感じました。とはいえ、教師としての道を貫くためには研修は欠かせません。日進月歩と言われる教育の現場で、「子育て中だから」と研修を怠るわけにはいきません。「百聞は一見に如かず」という言葉もあります。
三歳になった夏、加奈子の父親と、いつも預かってくれる私の母、兄夫婦にもお願いして、二泊三日の予定で茨城県に行きました。出発の前日には本屋に行き、加奈子自身が選んだ絵本『ぐりとぐらのかいすいよく』を買ってきて読みました。旅立つ申し訳なさから、絵本を通してスキンシップを図ったのです。翌朝は、小学生の夏休みラジオ体操におばあちゃんと行っている間に、私は出発しました。私自身が別れがつらかったのです。初めての「母子分離」です。
その夜、加奈子は父親と二人で寝たそうです。父親がわざとふざけて「お母ちゃーん」と言うと、「よしよし、お母ちゃんがいないんだから我慢してよ。加奈ちゃんがいるからね」と肩を抱いてくれたそうです。翌日はおばあちゃん宅にお泊まりで、伯母ちゃんは絵本を覚えるほど何度も何度も読まされたとのこと。『小公女セーラ』『白雪姫』などなど。
そういえば、この頃は『白雪姫』や『シンデレラ』の物語に凝って、出版社別にいろいろ買いました。成長して小学生の頃には、福音館の『グリム童話』で、より原作に近いものを読むようになっていました。ともあれ、私の初めての研修旅行は無事に終わりました。

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加奈子が三歳になるまでは、職業を持ちながらも、職場にわがままを言って、できる限り母親としての時間を優先しようと考えていました。もちろん、勤務時間中はそうはいきませんが、勤務終了後の夜の集まりなどは控えていました。そのような私の気持ちをくみ取ってくださる先輩が、「母親の代わりは誰にもできないから、大事にしてあげなさい。やるべき時が来たらやればいいのよ」とアドバイスしてくださいました。
女性が良き職場人と良き母親として両立していくためには、そのような温かい雰囲気がありがたいものだと、つくづく感じました。とはいえ、教師としての道を貫くためには研修は欠かせません。日進月歩と言われる教育の現場で、「子育て中だから」と研修を怠るわけにはいきません。「百聞は一見に如かず」という言葉もあります。
三歳になった夏、加奈子の父親と、いつも預かってくれる私の母、兄夫婦にもお願いして、二泊三日の予定で茨城県に行きました。出発の前日には本屋に行き、加奈子自身が選んだ絵本『ぐりとぐらのかいすいよく』を買ってきて読みました。旅立つ申し訳なさから、絵本を通してスキンシップを図ったのです。翌朝は、小学生の夏休みラジオ体操におばあちゃんと行っている間に、私は出発しました。私自身が別れがつらかったのです。初めての「母子分離」です。
その夜、加奈子は父親と二人で寝たそうです。父親がわざとふざけて「お母ちゃーん」と言うと、「よしよし、お母ちゃんがいないんだから我慢してよ。加奈ちゃんがいるからね」と肩を抱いてくれたそうです。翌日はおばあちゃん宅にお泊まりで、伯母ちゃんは絵本を覚えるほど何度も何度も読まされたとのこと。『小公女セーラ』『白雪姫』などなど。
そういえば、この頃は『白雪姫』や『シンデレラ』の物語に凝って、出版社別にいろいろ買いました。成長して小学生の頃には、福音館の『グリム童話』で、より原作に近いものを読むようになっていました。ともあれ、私の初めての研修旅行は無事に終わりました。

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